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【同期対談】文部科学省での3年間で、どこまでいける?何ができる?(前編)

教育や科学技術、文化、スポーツに関して日本が抱えている“未来“の課題に取り組んでいる文部科学省。実際の仕事でどんなことをするのかイメージが湧かない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、労働市場がますます流動化しているこの時代、入ったところでずっと働き続けるというのは、必ずしも就職の前提ではありません。皆さんの中にも「ファーストキャリアとしてどんな経験・スキルを身につけるか」を踏まえた就職活動、という考え方を耳にした方もいるのではないでしょうか。

そこで、
「文科省で働くというキャリアで、数年でどれぐらいの経験やスキルを身につけられるんだろう?」
「実際に行っている業務はどんなものなんだろう?」
という疑問にお応えすべく、今回は2019年に技術系で入省し、丸3年が経過した4人に、3年間で経験する業務の“リアル“を掘り下げて、聞いてみました!

「とりあえず3年続けて働いてみろ!」なんてセリフもよく聞く言葉ではありますが、まさに「とりあえず3年」を終えたリアルな感想を以下の4名がお伝えしていきます。

聞き手: 高山正行(研究振興局参事官(情報担当)付。2019年入省)
※所属等はいずれも、インタビューを実施した時点(2022年5月)のものです。


3年間で身につくスキルと経験~これだけ幅広く奥深い!~

―高山 文科省で3年仕事をして、皆さん1度は部署の異動を経験していますが、実際に異動してみて、仕事の質の違いとかは感じられましたか?

―望月 私も今まさにそうですが、技術系で入っても、意外と早い段階で教育部局のポストに就くこともありますね。
私はここまでいた部署が、科学技術系の原課(※)⇒筆頭課(※)⇒教育系の原課で、全部仕事の仕方が違いました。原課・筆頭課の違いで言うと、研究振興局の筆頭課では業務量が多く、てきぱきと処理する力が求められましたが、今のポストに異動してみると、それ以上に、事業や制度・行政の現状に関する知識表現の仕方について、深いものを要求される難しさを感じました。原課には原課の大変さがありますね。

原課:
特定の専門性を司り、実際に事業を運用し、あるいはニーズに応じてその専門分野に関わる新しい事業・取組を立案する課。
筆頭課:
部局単位で、各原課のとりまとめを行う課。文科省では「○○企画課」(○○には部局に由来する名前が入る)や「政策課」、「総務課」と呼ばれる課が該当する。部局全体での国会や予算要求等の対応を取りまとめる。

―桑原 私は、かつて先輩に、「個別の施策を持っている担当課はどれだけ具体例を知っているかが、外に説明をしていく上で重要だ」と言われたことが印象的でした。
例えば自分が担当していた世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)(※)という事業では、海外から優秀な人材を獲得するため、ある研究拠点では研究者の配偶者の就職先を斡旋したり、異分野の学問領域を融合させるために研究者の集うティータイムを義務づけています。
他にも、国からの支援が終了しても、大学自らが研究所を支え、研究の質を高めていくために、任期なしのポストを何名も確保しているといった事例もあります。
原課で抱える事業については、運営や実際の研究開発の詳細を法人にお任せする場合もあるので、法人の体制や性質をよく理解し、関係性をしっかりと築き上げた上で、情報交換できるようにしておくことが重要だと思いますし、そうした詳細の把握が知識の深さにもつながりますね。

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI):
世界から第一線の研究者が集まる、優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界トップレベルの研究拠点の形成を目指す大学等の構想を支援する事業。 現在14の拠点が選ばれている。


―渡邊
 原子力の話でも、例えば議員の先生方や地元自治体の方々とのやり取りで、これまでどのように調整をしてきたかといった経緯の話になった際、「渡邊さんが知らないなら、わからないね…」ということになってしまうので、こうした知識の幅が責任そのものであるように感じます。
例え誰かが知っていそうでも、自分が知らないということが起きないように、日ごろから業務に関連する分野の知識や最新の動向を調査したり、桑原さんの話にもあったようにカウンターパートになる法人に聞けるように、人間関係の構築も大事だと思います。

―梅田 望月さんと同じく、私も現在筆頭課業務を担当していましたが、原課とは正反対に、パラレルに多様な物事を進める必要があるのが筆頭課の特徴だと思います。
そのためには、局全体に関することを知っていなければならず、私のいた局であれば量子・AI・バイオ・マテリアル技術等の重要技術分野や基礎研究振興に関わる様々な取組の全体像を、業務を進めながら理解していきました。
何か報道等で大きな動きがあった時に、全体像を知らないと、素早く的確な対応ができず、省全体、ひいては国にとっての不利益につながりかねないという責任もありますが、その分業務を通じて知識量が単に増えるだけでなく、視野も広がりを持つようになるのはとても面白いですし、こういった総括業務を行うことで、省内の様々な人と関われるのは魅力的だと思います。

―高山 望月さんの言ってくれた「表現の仕方」というのは、どういうスキルでしょうか?

―渡邊 私が上司を見て感じたのは、伝える内容をどのように整理するかが重要だということです。言葉のわかりやすさもそうですが、それだけではなく、要点を絞って、理解してもらいたいこと、そして相手の理解に必要なことだけを取捨選択して伝えることの重要さを見て学び、自分もそういうことができるよう、日々努力しています。
議員の先生方や、外部の方に説明するときは、時間の制約があることも多いですから、その中でどうやって効果を最大化できるか、いつも考えさせられます。

―望月 行政官から説明する機会だけでなく、大臣から発信いただく場合も、日々の業務で表現の仕方に注意を払うようになりました。
例えば、週2回定例的に開いている閣議後記者会見の場では、質問いただくのは報道陣の方ですが、国会では国会議員からの質問になるので、質問者によっても、あるいは回答の意図に応じても表現の仕方が変わります。
一方で共通するのは、内容によってはニュースとして報道されることもあるという点で、伝える言葉の印象次第で報道のされ方が変わる可能性もあり、場合によっては特定の言葉だけが切り取られて拡散される可能性も否定できません。一つ一つの表現に注意を払うというのも、重要なスキルだと思います。


仕事の「ロジ」と「サブ」~年次が少し上がって見えてくること~

―高山 必要な知識やスキルについて議論いただきましたが、入省してからいきなりこれらを身につけて議論に参加したり、政策立案を担ったり、ということは実際にはなかなかないと思います。
入省してすぐのうちは、とにかく「ロジ(※)」中心の仕事、そしてだんだん年次が上がっていくにしたがって、「サブ(※)」の仕事が増えていっているかと思いますが、このあたり、皆さんはどのように感じられていますか?

ロジ:
「ロジスティックス」の略で、仕事の段取り全般。例えば会議を行うにあたっても、主催者側であれば会場の手配・準備や各種資料の準備を行ったり、遠方の会議に泊りがけで参加するにあたっては交通手段や宿泊場所の手配を行ったり、ほかにも日程調整やアポイントの調整等が該当する。 
サブ:
「サブスタンス」の略で、仕事の中身のことを示し、ロジと対で使われる言葉。例えば会議においては、どういう内容を決定するのか、あるいは閣僚の方々に何を発言いただくか、有識者にはどういう議論をしていただくのか等が該当する。

―桑原 ロジ(段取り)を担当し、省内の幹部が国会議員の先生に法案の説明をしているのを見ていた際、同じ内容なのに、説明する相手に応じて、説明ぶりを変えていく様子はすごいなと思いました。
国会議員相手でも、一人一人のバックグラウンドや人柄に応じて説明ぶりを変えていて、ただサブ(中身)を深く理解しているだけではなく、パーソナリティや人間関係をよく把握していないとできない、というのが、奥が深いところだと思いました。
よくロジの中で「説明に伺う国会議員の先生のプロフィールを準備しておいて」という指示を受けており、これまでは「そこまでする必要があるのだろうか」とも思いましたが、サブの効果を最大化する上で重要なことだったんだな、と今では強く納得しています(笑)。

―渡邊 部署によっては少数精鋭で回していく案件も出てくるので、その案件に応じて、年次が若くてもサブを担うことも出てくるように思います。
私は2~3年目にいた部署でロジと一緒にサブを担うことも増え、例えば告示改正の仕事については、内容や経緯についても幅広くフォローできるように勉強させてもらいました。「告示」は、法律や規則等と同じく行政機関が広く国民に周知するものですから、省内の関係者にしっかりと中身をご説明していく必要があります。
ロジと並列して、サブにも係わるという経験は、責任も重く感じたものの、結果的にその内容を一番よく知っている担当者となることができ、良い成長の機会になりました。

―望月 国会答弁の下書きをする仕事も担うようになって、色々面白く感じるものがあります。その時々の動向や政策的な動きを加味した上で書くことになるので、ある意味でオリジナリティを求められる仕事だとも感じます。
一方で、こういったサブの仕事をはじめとして、業務の重さがも能力・職位に応じて増してくる中、同時に新たに入省した人たちを部下に持つようにもなるので、その人たちにロジを担ってもらうなど、業務量のバランス調整にもコミットする立場に来たようにも感じています。
サブとロジで、放っておくと進め方の時間感覚や歩幅が異なってしまうので、調整が重要になりますが、担当が分かれるとその分難しいところも多いですね。

―梅田 私もいつの間にか係長に昇進し、後輩を部下として教える立場になってしまっています(笑)。3年前に入省したときは、自分が教えられる立場であり、その時に指導してくれていた4~5年目の係長に、自分が4年目になった時に同じ立場が務まるのかが不安でしたが、気づいたらまさにそのポジションにいて、今思うと成長していったんだな、と感じます。
一方、この成長のプロセスの中で、単に指示された仕事をこなすだけでなく、それこそサブに相当する部分で、上司の意見を一方的に指示として聞くだけでなく、きちんと自分の考えも伝えて議論していくことが求められていたようにも感じています。文科省の方々は、上下関係にとらわれずにそういう議論をすることを皆歓迎してくれますし…。部下に指導をするにあたっても、議論の仕方をどのように伸ばしていけるかは新しい課題だな、と感じています。

―桑原 私もこれから直属の部下を持つことになると思いますが、梅田さんが言っていた、議論の仕方の部下への指導は特に気を付けていきたいなと思います。特に若い年次では仕事が細分化され、その分「木を見て森を見ず」なところが自分自身にもあり、場合によっては「葉っぱ」単位の観点で議論してしまうこともあるので(笑)。
葉っぱ単位での思考・議論はとても大切なのですが、行政として国全体に与えるインパクト、あるいは行政の中でどういう位置づけかを踏まえた議論が必要になってくると思います。最初に木が見える段階から、経験を重ねていろいろな木が見えるようになって、その後森として見えるようになるというところを、自分自身も磨きながら、部下にも自発的に意識させながら関わっていきたいなと思います。



いかがでしたでしょうか? とりあえず3年、されど3年。
「ロジ」から「サブ」の仕事を任されるようになり、やりがいとともに様々な葛藤もあるようですね。

次回は後編!
これまで携わった政策や任された仕事、今後の抱負に加えて、若手として今後の文部科学省に期待したいことについても、ぶっちゃけて頂きます!


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