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音楽家、研究者…色んな進路を考えた私が、いま若手研究者支援に携わっているわけ

あっという間に入省4年目になりました。森岡文子と申します。

事務系入省ですが、一時期研究者を目指していたこともあり科学技術分野への興味が強く、研究振興局2年(大学ファンドの立ち上げ等)→スポーツ庁9ヶ月(生涯スポーツの推進)→科学技術・学術政策局(研究人材の支援)と、科学技術系メインの部署を歩んできました

まだ職務経験は浅いですが、その分、職業に悩んだ学生時代が記憶に新しいので、これまでの進路選択を振り返ってみたいと思います。就活で「自分の軸」をなかなか決められずに悩んでいる方や、事務系志望だけど科学技術に関わりたい、といった方などのご参考になれば幸いです。


志望職種がピアニスト⇒研究者⇒公務員となったわけ

私は好奇心旺盛かつ優柔不断なタイプで、就きたい職業などなかなか定まらず、得意なピアノを活かして何か仕事ができないかなど真剣に調べていた時期もありました。

社会人になった今も大学のサークルのOB・OG演奏会などでたまに演奏しています

最初の転機は高校時代の研究活動でした。研究計画を立てて採択されれば学校から渡航費などが支援してもらえるプログラムがあり、「アメリカ、行ってみたいね」という軽い気持ちで友達と応募しました。

今から考えると研究と呼べるような内容ではありませんでしたが、「体内時計」、「時差ぼけ」というテーマで、自分たちを被験者にしてデータを集め分析・議論する中で、好きなテーマを追究できる研究者って楽しそうだと感じました。

そこで大学にはいわゆる理系で入学し、何の分野で研究者を目指そうか考え始めます。

第二の転機は大学1年時のゼミでした。ゼミといっても授業の1つで1年限定のものでしたが、地域医療をテーマにしたゼミでした。まち歩きや座学を通して各地域が抱える課題について議論するのですが、そのとき、人の生活や社会を変えるために頭を悩ませることの奥深さを感じたのです。同時に、社会で生きながら社会についてあまり知らず、社会に特段貢献もしていない自分にふと「これで良いんだろうか」と思いました。

大学教授になる方法を調べている中で研究者のキャリアパスの不確かさを感じたこともあり、将来の夢が、徐々に研究者から行政官に移っていきました

国際関係論専攻、科学技術インタープリタープログラム履修という一見「変な」選択

このような心境から、3年生進学時にいわゆる「文転」をし、国際関係論を専攻しました。法律・経済・政治・国際問題全てについて幅広く議論できる学科で、社会に関する考え方がバランス良く身につくのではないかという単純な発想でした。

また、引き続きアカデミアにも興味があり、特にアカデミアでの研究と実際の社会との距離が気になっていたことから、専攻のほかに「科学技術インタープリター」というプログラムを履修して、科学と社会をより良く繋ぐ方法について考えていました。

学科卒業旅行(モロッコ)。国際関係専攻では国際色豊かな友人が多く視野が広がりました

軸は1本には絞れない!開き直った自己分析

一つに絞って専門性を深めるような大学生活とは言い難いですが、枠にとらわれずどんなことにも興味を持つという自分の特性には合った4年間だったと思います。(余談ですが、フィールドホッケー部、ピアノサークル、バドミントンサークルに加え合唱団の伴奏をするなど、課外活動でも興味の広さは健在でした。)

フィールドホッケー部。スポーツも大好きで、テレワークの日は朝ランニングしたりしています


さて、就活の時期を迎えると、よく「自分の軸を定めましょう」といわれませんか?

でも私の場合、大学の研究環境に対する課題意識、(高校のプログラムや大学のゼミが転機に繋がった)自分の経験から教育の力を感じたこと、好きなのは音楽とスポーツであること…。1本の軸というのはなかなかみつかりませんでした

そんなとき、科学技術・教育・文化・スポーツという文部科学省が担う分野がぴったりはまることに気づきました。普通とは少し違う考え方だったかもしれませんが、私にとって文科省はすっと腑に落ちる選択でした。

研究者支援に関わる政策の渦中に立って

入省後は人に恵まれ色々と興味深い仕事に触れてきましたが、特に印象的だった2つを挙げれば、大学ファンドの創設と、現在携わっている博士課程学生支援の強化です。

一つ目の大学ファンドは、大学の研究基盤強化を目標に掲げた10兆円規模の巨大基金の構想で、省庁横断の一大プロジェクトです。入省2年目のある日突然の異動連絡を受けてから、ファンド創設に携わる特設部署で半年間駆け抜けました。大きな案件で関係者も多く、初めてのことや分からないことだらけでしたが、複雑かつスピーディーな調整が渦巻く「その時歴史が動いた」現場を体感できました

二つ目の博士課程学生支援については、昨年度に支援規模を倍増させるなど、こちらも歴史的な転換期にあります。ざっくり言うと、優秀な博士後期課程学生約7000人を対象に年間200万円~290万円程度支援しますという取組を新たに始めています。(今年度さらに約1000人分増加させます。)先日そのうち1つの事業についてわかりやすい解説記事をみつけたので、ご参考に載せておきます。(文科省が携わった記事ではないのですが、このように色々な形で広がっていくのはありがたいことですね。)

出勤日の仕事風景。テレワークが進んでいる部署なので、写真には出勤者が誰もいません(笑)


これら二つの共通点は、どちらも人への支援に力点を置いているところです。(大学ファンドについては、数校のトップレベル大学への支援に焦点が当たることが多いですが、実はもう一つの柱として、より幅広い大学を対象とした博士課程学生支援が予定されています。)そして、こうした事業に携わると、色々な人の生活を思い描くことが増えました。生活費相当額って実際どのくらいだろう、年間290万円もらえたらアルバイトをせずとも研究に専念できるのだろうか、在学中の支援があれば博士課程に進み研究者を目指すだろうか…。考えることは色々とありますが、そんなとき、博士課程進学した友達や、研修で知り合った大学の研究者の方など、現場の人が頭に浮かびます人を支援する政策には力強いリアリティがあることを感じています。

省内外の研究関係者にBridgeをかける活動

そのほかにも、2年ほど前に文科省の若手有志が立ち上げた「AirBridge」という団体に携わっています。行政官だけではなく、大学・企業の研究者や大学職員、学生など多様な人が集まって、研究環境に関するテーマ別討論会などを開催しており、現在報告書を出そうとしているところです。

AirBridgeを通して得られた何よりの財産は、省内外の人との繋がりです。職場だけでは得られない現場の感覚を学べるのがまず一つ。さらに、AirBridgeのメンバー内では科学技術に関する気になるニュースや省内の動きについて日常的にラフな情報交換が行われているので、自分の担当業務にかかわらず、課題意識を幅広くアップデートしていけるのも貴重な点ですね。

AirBridgeの意見交換会。この日は博士人材のキャリアパスについて約50人で熱い議論を交わしました

これまでとこれから

かつて研究者を目指した私が、研究者を支援する今。博士課程進学した友達も多く、身近な問題として重要性を感じながら仕事と向き合える、ありがたい環境です。

大学で理系学問に触れた期間は僅かですし、行政官として研究者支援に携わっている期間も、まだまだ短いです。それでも、アカデミアで研究に励む皆さんにも、アカデミアを支える側を選んだ過去の私にも、胸を張れるような仕事がしたい。紆余曲折あった(良く言えば分野横断的に歩んできた)自分らしい考え方やネットワークを活かして、研究者の支援という大きなミッションに立ち向かっていきたいと思います。