「文科省若手職員のwithコロナ時代の働き方」~海洋地球課ではこんな働き方をしています!~
入省8年目、海洋地球課の小原聡真(おはら そうま)です。
私は事務系入省で、入省当初は小中一貫教育や小学校英語教育の教科化などを担当し、3年目には1年間小学校で勤務をしたこともあります。6年目からは海洋地球課で、科学技術関係の業務をしています。
約7年文部科学省で勤務してきましたが、コロナ禍を経て、日々の「働き方」は大きく変わりました。今日は、私が勤める海洋地球課の様子をご紹介したいと思います。
1.とある1日の働き方
コロナ禍の前後で働き方がどう変わったのか、1日の流れを見ながら、具体的に比較してみます。
以下、順番に解説します。
<通勤>
私の課はテレワークに積極的で、5日中4日テレワークの週も。その日は、通勤時間(往復約2時間)がそのままなくなります。その分、朝ゆっくり本を読んだり、ランニングをしたり(年内にフルマラソン出場が目標です…!)。夜も、コロナ前より自炊が増え、ライフワークバランスが大きく改善しました。
<審議会>
「審議会」とは、各省庁が所管する分野での重要な事項について議論する会議のことです。例えば海洋地球課は「海洋開発分科会」の運営をしています。課で「審議会を開くぞ」となると、資料作成や会議準備など、結構なイベントになります。
コロナ前に対面で会議をしていたときは、委員や一般の傍聴者などのための大量の資料を印刷していました。1年目のときに、傍聴者が100人以上いるのに深夜になっても資料が完成せず、会議ギリギリまで何台もの印刷機を回して何とか間に合わせた記憶が・・・。
これがオンラインでの開催となると、資料の印刷や、会議場の机や椅子のセッティングなども不要となりました。会議のWeb設定をし、必要な資料は事前にホームページに載せて、委員や傍聴者の皆さんにメールで連絡して完了!今となっては「対面での審議会ってどうやっていたんだっけ…」という気持ちです。
<打ち合わせ>
海洋地球課は、海洋や北極・南極に関する研究機関の研究者や、連携する企業の方など、外部の方と話をする機会が多いのですが、これも今ではほとんどがオンラインです。例えば、最近私が担当した新規事業では、研究者や自治体職員など多様な方々から知見をいただき立案しました。
以前は、こちらが訪問するかお越しいただくことが必要だったので、遠方の方から話を聞く際は大変でした。どうしても関東近辺の方から話を聞きがちでしたが、今では北海道や沖縄どころか、海外の方からも気軽にお話しをお伺いすることができるように。場所の確保や出張手続きなどの雑務もかなり減り、むしろ中身の準備に注力できるようになったことや、所在地に限定されず幅広い方から話を伺えるようになったので、組織としての政策立案能力の向上にも寄与していると感じています。
<資料作成>
資料作成も大きく変わりました。それは「集中力」です。霞が関は気軽にすぐ電話をする文化があります。コミュニケーションの点ではいいかもしれませんが、受け手としては作業が中断されるため、急ぎでないならSlackでチャット入れといてよ・・・という気持ちになります。テレワークだと、それほど電話も鳴らず、基本はチャットやメールで連絡が来るため、「今から1時間は集中する時間」などとして作業に集中することで、作業の生産性は向上していると感じています。
昔は資料の作り込みをみんなが帰った後の深夜に回すこともありましたが、今はむしろそれをテレワークの日に回し、日中でしっかり片づけられるようにスケジュールを組むことで、残業時間の縮減にも取り組んでいます。
2.働き方改革、実際どうなの? 8年目と3年目職員の視点
続いて、私が海洋地球課に着任した2020年4月に新卒で入省し、私と一緒に働いてくれている林哲子(はやし さとこ)さんからもざっくばらんに話を伺いたいと思います。
(※)インタビュー時点:2022年6月
ー小原 林さんは新型コロナの感染拡大と同時の入省でしたね。その時の大変さも伺いたいんですが、まず、入省前の文科省の働き方の印象を教えてください。
ー林 就活のときから、国家公務員の「多忙さ」についてはずっと気にはなっていました。説明会でも「いつ一番大変だったか」を聞くようにしていて、「10年くらい前、全然帰れなくて洗濯が追い付かず、真冬に夏物のワンピースを着てジャケットを羽織って出勤した」というのを聞いたときは衝撃でした・・・。
ー小原 確かにそれは衝撃的ですね。入省後はどうでしょう?
ー林 確かに忙しいときは忙しいです。政府予算案の調整の佳境となる12月はかなりバタバタします。他にも、国会の対応が生じたり、研究機関で事故が起きたりしたときには忙しかった記憶があります。
でも、毎日そんな忙しさかというとそうではないですね。課としても残業縮減の意識がすごく強く、上司から率先して「これは明日でいいから今日は帰ろう!」となることもしばしばです。
ー小原 確かに、私が入省した頃に比べると、省全体としても残業削減の意識はとても高まっていますね。
林さんは、「国家公務員として働くこと」に慣れるだけでなく、「コロナ禍」でテレワークやオンライン会議への対応も求められたわけですけど、そのあたりはどうでした?
ー林 実は、入省して翌週からテレワークになって出勤しなくなり、担当していた有識者会議も最初からオンラインでの開催でした。逆に「全員が出勤している」状況で仕事をしたことはほとんどがないですし、「対面で会議を開催する」というのもしたことがないので、いわゆる「コロナ前の状態」での仕事がイメージできないんですよね。
今でも多ければ週2~4日はテレワークですし、最近は家にディスプレイも買ってしまったので、もはや家が職場の環境を超えてしまっている気がしています。
ー小原 それはとても分かります! 私も家にデスクとかディスプレイを置きましたし、マウスやキーボードも家用のものを買いました。むしろ家だと豆から挽いたコーヒーをいつでも飲めますし、ごはんを買いに行かなくてもささっと作れるし、家のほうが環境として快適な面がありますよね。
ただ、まだ仕事にも慣れていない状態で、急に「テレワークで!」と言われて、不安はなかったですか?
ー林 最初は確かに不安でした。「大した案件じゃないけど、これで電話して相談していいのかな…」とか、「このメールの書き方で失礼にならないかな…」とか。打ち合わせで分からない言葉があっても、打ち合わせ後にすぐ聞けないこともありました。
ただ、最初の数か月ぐらいは毎週小原さんが1on1のミーティングをしてくださったので、困っていることの共有や、打ち合わせでついて行けなかった内容を後から教えてもらえたのは助かりました。
ー小原 私が1年目のときには、残業していると上司や他の係の先輩に話を聞いてもらったり、役所の昔話をしていただいて色んなことを学ばせていただいたんですけど、テレワークだとそうした「オフ」の話をする機会が中々ないですからね。私自身1年目の職員を部下として持つのは初めてだったので、丁寧にコミュニケーションを取ることは強く意識しましたね。
3.コロナ禍で変わったもの
ー林 ここからは逆に私から小原さんに質問したいと思います!
私はまだ入省してから海洋地球課しか知らなくて、「海洋地球課はテレワークや超勤削減の取組が特に進んでいる部署だ」と同期からも言われるのですが、うまくできたのはどういう理由があるんですかね?
ー小原 異動と同時にコロナ禍に突入したときは本当にどうしようかと悩みましたね。今でこそ「家のほうが仕事の生産性高いな」と感じて、資料作成などの業務はあえてテレワークの日に振り分けることもありますが、当時は全員出勤することが当たり前だったので、上司に何かを聞こうとしたり、部下に何か指示したりするときにすぐできないのは戸惑いました。
ただ、当時の上司と「組織としての生産性を高めるためには、各個人が自分の生産性を最大化できる環境が必要だよね」という考えを共有できたのは非常によかったですね。
ー林 「各個人の生産性の最大化」ですか・・・。それぞれの職員の事情に応じて対応していく、ということですか?
ー小原 そうです!各職員の生産性の発揮の仕方って色々あると思うんですよ。例えば、職場に来たほうが集中できる!という方もいれば、家のほうが集中できます、という方もいる。それは、その方の内的な特性に由来するものもあれば、育児や介護といった外的な要因もあります。様々な要因がその方を形作っていて、その方が最も輝けるのはどんな環境で、どうすればその環境が用意できるのか、というのは組織・マネジメント側もちゃんと考えてあげないといけないんだなと思ったんですよね。
海洋地球課では、課長のリーダーシップもあり、皆でそうした感覚が共有できているので、当然のようにテレワークで勤務する方がいるし、育児のための時短勤務の方も含めて、一緒に働けていると考えています。
ー林 なるほど。もちろん時には出勤せざるを得ないこともありますし、国の組織として、残業してでも対応しないといけないときもありますが、各個人が一番心地よく働けるようにすることが大事だという考えを共有することは重要ですね。
4.今後の課題
ー林 働き方が多様になっていって、文化庁も一部京都に移転していく中で、文部科学省や霞が関全体の働き方をどうデザインしていくのがいいのか、今後も検討を続けていかないといけないなと思います。
最近ではコロナによる行動制限もかなり緩和されて、「じゃあもう全員出勤だよね」となっている組織も多くなっていると聞いています。
ー小原 非常にもったいないなと思いますよね。ちょうどコロナ禍に陥ったときに、文部科学省の働き方をどうするのか検討する省横断的なタスクフォースが設置されて、そのメンバーとして議論に参加していたんですが、テレワークやオンライン会議などの「新しい働き方」に、「コロナ禍を機に」取り組んでいくことが重要だということを取りまとめたのであって、コロナが落ち着いたから完全に元に戻しましょうね、などとは文科省はきっとならないと願っています。
新しい仕事の仕方・働き方改革の検討に関するタスクフォース報告書概要 (mext.go.jp)
ー林 一方で、どうしても出勤が必要になるときはありますよね。国会関係の対応だったり、外国の要人との面会などの国際案件だったり・・・。
ー小原 その通りで、文科省という国の組織として欠かすことができない仕事はありますね。あと、新しい働き方に挑戦するとはいえ、「この目で現場を見に行く」ことの重要性は損なわれることはないと思います。話を聞くだけならオンラインでいいですが、実際に研究されている現場を見て政策立案につなげていくことは行政官として不可欠ですね。
私も着任から最初の2年はほとんど現場に行けなかったので、最近は機会があれば意識して現場に出向いて、実際に研究設備や観測機器を見ながら研究者と意見交換するようにしています。
ー林 私もそこについていかせていただいて、大変ありがたいです!
現場を見て初めて、担当している分野の重要性や課題に気づくことも多いと感じています。
5.まとめ
今回は私の業務の1日を紹介しつつ、後輩との対談を通じて「文部科学省での働き方」の成果や今後の課題について考えてきました。
どの職種・どの職場であっても、完璧な環境というのはあり得ません。コロナ禍以後、全面テレワークを実施し続けている企業でも、社員間のコミュニケーションに課題があるといった話もよく聞きます。
大事なのは、「いま自分の職場・チームにはどういう人たちがいるか」を考えて、「みんなが最も能力を発揮できる働き方はどのようなものか」を全員で考えていくことなんだな、とこの記事を書きながら改めて感じました。
学生の皆さんはどんな働き方がしたいでしょうか?こうしたことを考えるきっかけとしていただけたらとてもありがたいです。